仏事・参拝・住職コラム(法話)

住職コラム・法話

・「新しい生活様式 〜生活の中に仏教を〜」

生活の中に仏教を取りいれることをおすすめします。といっても特に新しいことをはじめる必要は少ないのかもしれません。とういうのも、大阪は特になのですが、そこら中に浄土真宗に縁のある生活習慣が溢れているからです。ですからまずはその再認識からはじめていきましょう。

「オオキニ!ありがとう!」

まずは大阪弁から。「大きに有り難し」という仏教に大きく影響を受けた言葉が変化したものです。私達の存在は好き嫌いに関わらず、ご縁ある人や出来事がひとつでも欠けると成り立ちません。嬉しいことがあったとき、「オオキニ」と言うのは「あなたがいてくださったから」と相手様に対しての最高のお礼の言い方なのです。

「お影さまです」

影は、大阪本町の北御堂・南御堂の大屋根の影です。その間にある船場で商いをする商人たちが、「儲かりまっか?」「お影さまで」と声を掛け合っていたことがしのばれます。そして「オオキニ」と同様に自分の努力を語るのでは無く、他のはたらきを讃えていく姿勢こそ、浄土真宗的な思想です。

 自分を前に出すと結局はうまくいかないことがあると「怒り」「ねたみ」の心が出てしまいます。それは結局は自分の心を疲弊させるのです。

 住職も教えていただいたことなのですが、「自分の苦労を語らず、阿弥陀様のおはたらきを喜びそれを語るようにしなさい」と言われました。そしてそれは私が心がけ努力することで出来ることであるからすすんで励みなさいと言われました。

 確かに自分の苦労話ばかりしていると、それはやがて他人への僻み(ヒガミ)妬み(ネタミ)がつきまといます。でも「阿弥陀様が有り難い。阿弥陀様がいつも私を助けることに一生懸命でいてくださいます」と語っていますと、自然に「有り難い」「お影さまで」という言葉で終わっていく生活が出来てきます。

 大阪商人たちはきっと商売は思いやりであることを先人たちは言葉に込め、そして心のすわりを仏法に依って大切に維持していたのでしょう。

 

近江商人の伊藤忠兵衛氏

 近代ではその大阪商人のお一人に、伊藤忠兵衛氏がおられます。氏は滋賀県から出て伊藤忠商店(後の伊藤忠商事)を本町に開きました。理由は北御堂に毎日お参りしてから仕事を始めるためです。そして有名な「商売は菩薩の行」といい近江商人の三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)で商売を拡大していかれたのです。ここにも自分よりも相手を大切にしていく浄土真宗的生き方があります。

 とは言え、我々はつい自分を前にものを考える根性が染みついています。伊藤忠兵衛氏がわざわざ御堂の側にお店を構えたように、何か工夫をしなければ仏法第1の発想はすぐに消滅します。

 

お仏壇があれば

お仏壇に手を合わせて1日をはじめる習慣を身につけましょう。そしてそこで合掌礼拝したら、「有り難し」「お影さま」と心に唱えてみてもいいでしょう。

「衣食住の三は念仏の助業」と親鸞聖人の師である法然聖人はおっしゃったのです。当たり前の生活でも、お念仏を称えながら阿弥陀様がご一緒くださっている人生だといただくと、見えるもの感じるものが変わってくるのです。

お念仏を少しでも大切にするために生活に工夫をする。そして仏教を取り入れた生活を始めたとき、きっと新しい世界が開かれるのです。[